日出処の天子 山岸 凉子 (著) KADOKAWA/メディアファクトリー

日出処の天子 山岸 凉子 (著) KADOKAWA/メディアファクトリー

レビュー

どんな話ですか? 山岸涼子作の聖徳太子を主人公とする異色の漫画です。どう異色かと言うと、簡単に言ってしまえば、この作品における聖徳太子は、超能力者で、両性よりで、同性愛者よりに描かれているからです。作品が発表された1980年代は、今ほど、性に対する考え方が自由ではなかったですし、聖徳太子は立派な人というイメージが先行していたので、初めて読んだ時は強い衝撃を受けました。

この作品は聖徳太子が厩戸皇子と呼ばれていた時代を描き、権力を握り、孤独を深めつつも、遣唐使を送るところまでが描かれています。皇子の他に、准主人公で、かつ、皇子が好意を持っている蘇我毛人(蝦夷)の存在が作品を通して効いています。毛人はハンサムですが普通の人です。彼の考え方、見方を通すことで、皇子だけでなく極端な性格を持つ登場人物の気持ちもすんなり理解できます。

なぜその漫画をオススメしたいですか? 皇子の母親は実母でありながら、皇子の特殊能力を恐れるがあまり皇子をあからさまに避け、弟皇子を偏愛しています。しかし、皇子は母と容貌が似ている幼女を妻とするほど、母からの愛を求めています。皇子は毛人が自分以外の人を愛するようになると、全力で邪魔をします。知的である意味全て計算で動くような皇子ですら、そのようなことをしてしまいます。良い人で普通の人の毛人も妹が自分のことを想っていることに気付かず、自分の好きな人だと思い関係を持ち妊娠させてしまいます。一見、極端であり得ない設定で、かつ飛鳥時代という大昔の話ではあるのですが、人の性はこんなものなんだと学べる良い作品だと思います。

ラララ 金田一蓮十郎 (著) スクウェア・エニックス

ラララ 金田一蓮十郎 (著) スクウェア・エニックス

アマゾン商品紹介 自宅ではいつもおっぱい丸出し素っ裸状態の石村亜衣。バーで酔っ払っていた桐島に婚姻届にサインをさせ、その翌日いきなり離婚届けにサインを迫るそのワケとは?

レビュー

どんな話ですか? 会社をリストラされた桐島士朗が、バーで知り合った石村亜衣と流されるまま結婚してしまう。外科医の亜衣を専業主夫として支える士朗、ふたりの結婚生活の物語である。初めは亜衣が自らがバツイチになるために、士朗を丸め込み行った愛の無い結婚であった。

亜衣をふくめ、周りの人々も複雑な事情を持っている人物が登場する。しかし、お互いがそれぞれの背景を理解し受け入れ、お互いのことを思いやるようになり、いつしか本当の信頼関係を持つ夫婦となっていく、笑いあり、時々涙ありのハートフルストーリー。

なぜその漫画をオススメしたいですか? 出てくる登場人物は亜衣や准といった、複雑な事情を抱えている人が多い。

その内情はネグレクトだったり、放置子だったり、トランスジェンダーだったりで、なさそうで実際にあるテーマであるのが興味深い。その複雑な事情を持つ人々のことを理解し、受け入れるという、読んでいる人の心をジーンとさせる漫画である。と、同時にそれら社会的問題について考えてしまう漫画でもある。とても面白いのだが、面白いだけで終わらず、考えさせられる、というのが、この漫画の良いところだ。

登場人物がみんないい人で、結果安心して読めるところも良いところだろう。

やがて君になる 仲谷 鳰 (著) KADOKAWA

やがて君になる 仲谷 鳰 (著) KADOKAWA

アマゾン商品紹介 人に恋する気持ちがわからず悩みを抱える新入生・小糸侑は、生徒会の先輩・七海燈子が告白を受ける場面に遭遇する。誰からの告白にも心を動かされたことがないという燈子に共感を覚える侑だったが、やがて燈子から思わぬ言葉を告げられる。「私、君のこと好きになりそう」

レビュー

どんな話ですか? ”恋”という感情を持っていないが恋愛をしてみたいと思う高校一年生の主人公「小糸侑」と、誰からも”恋”という感情を寄せられたくないと感じている一つ上の先輩「七海燈子」。二人とも”恋”を理解できないがために親近感を覚えて親しくなるが、ある時、先輩から告白されてしまう。”好き”を知らないが先輩のことを好きになりたい主人公と、主人公のことが”好き”だが、好意を寄せられるのが嫌いな先輩との、かみ合うことのない”恋”のお話。
なぜその漫画をオススメしたいですか? 本作は、ジャンルとしては”百合”となり、女の子同士の恋愛を描くため好みがわかれるところですが、百合好きにはもちろん、そうでない方にもお勧めできる作品です。なぜならば、”好き”を題材にした恋愛作品は数多くありますが、本作のテーマは「”好き”という感情はそもそもなんなのかという根本的な問いかけをする作品だからです。最近は”LGBTQI”が話題になっていますが、それ以外にも”性”は多種多様です。本作は「デミロマンティック」と「リスロマンティック」という感情の持ち主たちのお話。現代だからこそ、多くの方に見てもらいたい作品です。

鼻下長紳士回顧録 安野モヨコ (著) コルク

鼻下長紳士回顧録 安野モヨコ (著) コルク

アマゾン商品紹介 20世紀初頭、フランス・パリ。
売春宿で働くコレットは、訪れる“変態”的な欲望を抱えた紳士たちを相手に、出口の見えない生活を送っていた。
彼女の唯一の幸せは、どうしようもなく惹かれてしまうヒモ男、レオンとの逢瀬の時間。
…たとえ、彼がコレット以外の女のもとへ通っているとしても――…。「変態とは、目を閉じて花びんの形を両手で確かめるように、自分の欲望の輪郭をなぞり、その正確な形をつきとめた人達のことである……」
絢爛なる花の都の夜に息づく、安野モヨコの描く“変態”たちとは一体――?

8年ぶりの、安野モヨコ新作ストーリー!
「さくらん」「バッファロー5人娘」につづく、力強く生きる“娼婦たち”の物語。電子版では、雑誌収録時のカラーをすべて収録!!

レビュー

どんな話ですか? 20世紀初頭のフランス。

パリの娼館で働く娼婦コレットは、毎夜入れ替わり立ち替わりやってくる変態紳士たちを相手しつつ、時には彼らと交流を深めながら日々過ごしている。人には言えないような欲望を秘めた紳士たちは、娼館では剥き出しの欲望を発散すべく様々なプレイを娼婦たちに求めていた。

主人公コレットをはじめ、娼館で働く娼婦たちは外の世界に飛び出すことが許されない。閉ざされた世界の中で彼女たちが希望を見出すのは自分のヒモ男の存在であった。

娼婦でありながら学のあるコレットは、とある東洋人の紳士から美しいノートを渡され、日々起こった出来事を日記として書き綴る。店に訪れる客たちのこと、同僚の娼婦や店のマダムのこと、そして滅多にやってこない自分のヒモのこと…

なぜその漫画をオススメしたいですか? 女なら誰しもが登場人物の誰かしらに共感できる部分があると思います。本心では自分を愛しているかも分からない男への想いを抱く主人公、食欲・性欲・金銭欲の思いのままに生きる親友、同性への叶わぬ気持ちを秘めた男嫌いの友人など、誰も彼もがひりつく瘡蓋のような想いや欲望を抱えて生きている。生々しい女たちの生き様が何処か滑稽で、逞しくて、清々しくも感じます。彼女たちの懸命に生き抜く姿を、女であれば一度は見届けて欲しいです。

ハッピーバースデー ymz プランタン出版

ハッピーバースデー ymz プランタン出版

アマゾン商品紹介 自分らしく生きる。
男友達3人の「恋」と「友情」と「人生」。会社員の朔人。
バーの店長・恒助。
ショップ店員の悠太郎。
3人は大学で出会い社会人になった今も付き合いがある
気の置けない友人達。
セクシャリティも仕事も性格も違う3人が、
それぞれの恋に友情に人生に迷い、
それでも自分を信じて今日も前へ進む。
新鋭・ymzが描くボーイズライフ!
どんな話ですか? 会社員、バーの店長、ショップ店員の男子仲良し三人組が、お互いの人生に干渉しながら恋をしていく、友情物語の側面が強いBLです。
なぜその漫画をオススメしたいですか? BLというイメージの枠にとらわれない視野の開けたストーリー、かつ健全なので初心者でも気軽に読めて楽しい。

IS 六花チヨ 講談社

IS 六花チヨ 講談社

アマゾン商品紹介 確率として2000人に1人。男でも女でもない性「IS―インターセクシャル」。ISの問題を恋愛と感涙でつづります。声も出せずに震えている私達を知ってください。
どんな話ですか? インターセクシャルに生まれた主人公が、自分なりの幸せをつかもうと懸命に生きていく物語。
なぜその漫画をオススメしたいですか? 自分の身の回りにもいるかもしれない存在に改めて気づきを得られ、改めてどう生きるかを考えさせられる物語だから。自分を見つめなおすきっかけにもなる。

水玉ハニーボーイ  池ジュン子 白泉社

水玉ハニーボーイ  池ジュン子 白泉社

アマゾン商品紹介 強さを求めてひた走り、「侍」の異名を持つ剣道部主将・仙石芽衣。女子力高く仕草や口調は女の子、女装も辞さないオネエ男子・藤司郎。真逆の2人だけど、オネエ男子が侍女子にまさかの恋。告白攻撃を侍女子が叩き斬る!? 「新しい扉、開けるわよ。」ツッコミ不在(!?)のハイテンションラブコメ!!
2014年11月刊。
どんな話ですか? かっこいい属性の女の子とわけあってオネエの男の子が、まわりの仲間たちを巻き込みながら不器用に恋をするお話です。
なぜその漫画をオススメしたいですか? ヒロインが男女どちらかわからないほど性別的役割の境目がないので、ザ・少女漫画という雰囲気のものとは一線を画していて、男女問わず楽しめる。

西洋骨董洋菓子店 よしながふみ 白泉社

西洋骨董洋菓子店 よしながふみ 白泉社

アマゾン商品紹介 「早く死ね、このホモ!!」そんな酷い言葉で昔振った相手が、目の前に現れた。
今は天才パティシエになっているという。
俺は洋菓子店を開こうとしていて、彼が自分を覚えていないのをいいことに彼を口説きはじめるが、彼は今や『魔性のゲイ』に成長していて……!?
どんな話ですか? 幼少期に誘拐された思い出があるオーナー橘と魔性のゲイの天才パティシエの小野と網膜剥離でボクシングを辞めざる追えなくなった甘党のエイジ、そして橘オーナーの幼馴染の千影で洋菓子店を始める。洋菓子店に来たお客さんも絡めて洋菓子にまつわる人間模様を繰り広げる。
なぜその漫画をオススメしたいですか? 様々な悩みを抱える人たちが出てくるが、子ども向けの漫画だったらどうにか解決しようとするが、大人向けの漫画なだけあってしっかりと解決できなくてもそれでも日常がおとずれ、それが良い悪いではないのだと教えてくれる作品です。出てくるお菓子も美味しそうで、オーナー橘の菓子の説明を読んでこんな味なのかなと想像が膨らまされます。
どんな人に読んでもらいたいですか? イケメンが好きな人、お菓子が好きな人、人間関係に疲れている人、トラウマを持ってる人
読んだことによるエピソード 過去の問題が解決しなくても生活をしようと思いました。

ぼくは麻理のなか 押見修造 (著) 双葉社

ぼくは麻理のなか 押見修造 (著) 双葉社

アマゾン商品紹介 友達が一人もいない大学生の≪ぼく≫の唯一の楽しみは、コンビニで見かけた名も知らぬ女子高生を定期的に尾行すること。
いつものようにその娘を尾行していたら突然記憶が飛び、≪ぼく≫はその娘のベッドで寝ていて、≪ぼく≫はその娘になっていた。
その娘は≪麻理≫という名だった――。『惡の華』『漂流ネットカフェ』で話題の押見修造最新作。「漫画アクション」にて連載中。
どんな話ですか? 新海誠監督の「君の名は」が大ヒットしましたが、この作品も同じく男女入れ替わりを題材として取り扱った作品です。学校にも行かず、バイトもせず、ただ家に引きこもってゲームばかりしていた大学生の小森功は、深夜に訪れたコンビニで毎日出会う美しい女子高生と出会うのが唯一の心の救いでした。しかしある日、コンビニでいつもどおり女子高生に見とれていた功は急に意識を失います。気がついたとき彼は、鏡に写った自分がその女子高生になっていることに気が付きます。彼はクラスメイトで同じくまりを信奉していた柿口依とともに、もとに戻る方法を画策し始めます。
なぜその漫画をオススメしたいですか? 「君の名は」は男女入れ替わりものとして、とても爽やかな青春ラブストーリーとしてまとまっていましたが、この作品は「惡の華」で有名な押見修造さんによるもので、とても現実的な一癖も二癖もある展開になっています。一コマ一コマが写真ででもあるかのような超絶的な画力もさることながら、人物たちの心理描写が非常に秀逸。人間の汚い部分に真っ向から向き合った物語の展開が、ただのラブストーリーでは面白くない人もきっと満足できると思います。物語を読み進めていくことで、実はただの入れ替わりものではない、人間の心理の深い部分を主題とした作品であることも明かされていきます。
どんな人に読んでもらいたいですか? 表面的な恋愛や正義や夢などの、子供向けの作品では満足できない方におすすめです。より現実的で人間の根本を見据えた、純文学作品のような深い人間ドラマが味わえます。また、作者本人が言っている通り、随所にかなり過激な変態的描写もあるので、そちらの方に興味がある人も読んでみると面白いと思います。
読んだことによるエピソード 押見修造と言う漫画家の才能を初めて実感した作品です。この作品で彼のファンとなり、現在出版されている作品にはすべて目を通しました。

やわ男とカタ子 長田亜弓 (著) 祥伝社

やわ男とカタ子 長田亜弓 (著) 祥伝社

アマゾン商品紹介 オネエvs喪女 自分嫌いのあなたに捧ぐ、自意識★克服★ラブ?コメディ! ! モテない・サエない・自信ない……。 こじらせ喪女の藤子が合コンで出会ったのは運命の相手――ではなく、 おせっかいなオネエだった!? 美形オネエ・小柳の力を借りて、自分を“女”と認められない藤子のジェンダートライが今、始まる…!
どんな話ですか? 自分に自信がないアラサー喪女の主人公とバイセクシャルのイケメン弁護士の恋愛漫画です。
自分に自信がなさすぎて自分を卑下しすぎてしまい、合コンに行っても場をしらけさせてしまう主人公が、学生時代からの親友に連れて行かれた合コンに参加した際に出会ったイケメン弁護士のオネエに女性として人間として成長させてもらっているうちに恋に落ちます。
交際を始めたものの、相手との経験差から自己嫌悪を陥ってしまったり、時には被害妄想に走ったり、時には勇気を出して一歩踏み出してみたり、、、。
主人公とオネエの一進一退の恋愛模様や、恋愛や人生に対する葛藤が共感できる焦らされ系ラブコメ漫画です。
なぜその漫画をオススメしたいですか? アラサー喪女とイケメンオネエの恋愛という新しいジャンルが今後の展開が予測出来ず面白いです。
しかし、恋愛要素だけでなく、現代の多くの人が持っているのではないかと思うような、自分に自信がなく、周囲と自分を比べてしまったり、羨んだり、一歩を踏み出せない葛藤に共感したり、それを理解して優しくも厳しくアドバイスをくれるイケメンオネエの言葉に励まされる場面が多くあります。
また、最近ジェンダー問題に世間が理解を持つようになってきているとはいえ、まだまだ当人たちにしかわからない悩みを知れたり、恋愛要素だけでない沢山考えさせられる漫画になっており、作品として、とても面白い内容です。
どんな人に読んでもらいたいですか? 自分に自信がなく、自分を中々肯定してあげられない人に読んで欲しいです。
全てを優しく包んでくれるというわけではないですが、自分は自分で人は人なので、自分には自分の悩みがあり、自分が羨ましいと思う人にも自分と同じように悩みがある、という事を改めて認識させられると思います。
悩みや一歩踏み出すことへの不安があるのは自分だけではないのだということが知れ、自分や自分の発言を客観的に見つめ直す機会になると思います。
読んだことによるエピソード 私も主人公と同じく自分に自信がなく自分を卑下してしまうことがあります。
しかし、主人公がイケメンオネエの美人な元カノが現れた時、その元カノは再会したオネエに自分が選ばれす、傷ついている時にあなたは勝ち組なんだから私なんかよりという発言をオネエに選ばれた主人公がしてしまい、元カノに自分が常に傷つく側にいると思わないでと言われるシーンがありました。
このシーンから、自分があの人は完璧だ、羨ましい、と思った人も同じく人間であり、傷つくことも不安になることもある、全てが完璧に思い通りにいく人などいないのだと改めて考えさせられました。