愛と呪い ふみふみこ 新潮社

愛と呪い ふみふみこ 新潮社

アマゾン商品紹介 物心ついた頃には始まっていた父親からの性的虐待、宗教にのめり込む家族たち。愛子は自分も、自分が生きるこの世界も、誰かに殺して欲しかった。阪神淡路大震災、オウム真理教、酒鬼薔薇事件……時代は終末の予感に満ちてもいた。「ここではないどこか」を想像できず、暴力的な生きにくさと一人で向き合うしかなかった地方の町で、少女はどう生き延びたのか。『ぼくらのへんたい』の著者が綴る、半自伝的90年代クロニクル。

 

どんな話ですか? 物心付いた頃から父親に性的虐待、母親には肉体的虐待を受け続けてきた中学生・愛子。新興宗教を信仰する一家の長女として生まれた彼女は、父親の虐待がもたらした認識の歪みのせいで学校でも孤立を余儀なくされる。やがて愛子は援助交際に走り、自分を汚す事で救いを求めるのだが、大人になった彼女を待っていたのはさらに過酷な魂の地獄だった。阪神大震災やオウム真理教、酒鬼薔薇事件が彩った平成を舞台に、出口のない思春期に心を殺されていく1人の少女の姿を生々しく描いた衝撃の自伝漫画。
なぜその漫画をオススメしたいですか? 作者の自伝的漫画ということもあって描写が非常にリアルで生々しいです。
阪神大震災やオウム真理教、酒鬼薔薇事件など、当時世間を騒がした時事問題や事件が背景に描かれているので、愛子と同じ平成前半に思春期を過ごした読者は痛みすら感じます。
また虐待・援助交際・ひきこもりなどの問題も扱っており、愛子と同じ体験を経た読者は、トラウマの核を容赦なく抉られるような共感を余儀なくされます。
1巻では漫画的なデフォルメタッチだったのが、愛子が成人する3巻においてはリアルめの描写となり、それが主人公の内面の変化に対応している見事さに唸らされます。
虐待の当事者である両親を一面的な悪者として断罪せず、父親の行為を傍観せざるえなかった母親の苦悩と贖罪にも切り込んでおり、単なる毒親ものにとどまならない、母娘関係の深みにも言及しています。
過ぎ去りし90年代へのレクイエムとして、愛子と同じ平坦な戦場を生き抜いた読者は無視できない作品です。

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