NANA―ナナ―   矢沢あい (著)  集英社

NANA―ナナ―   矢沢あい (著)  集英社

アマゾン商品紹介 幸せの名をもつ少女が自らの意志で、運命を、切り拓く…。小松奈々と大崎ナナ…同じ名前を持つ2人の少女が繰り広げる、感動の恋のストーリー! 2人の「ナナ」、それぞれの幸せはどこにある…?

レビュー

どんな話ですか? まったく別々の環境で生きてきた2人の20歳の女の子、「奈々」と「ナナ」が東京行きの列車の中で運命的に出会い、ルームシェアを始めます。奈々は彼氏の章司を追って上京してきた今どきの女の子で、ナナはゴシックファッションに身を包み、歌手としての成功を夢見て上京してきたどこか陰のある女の子です。ある日奈々は、実はナナが日本音楽界を席巻しているバンド、「トラップネスト」のギタリストであるレンと交際していたが、レンのデビューをきっかけに関係を絶ったことを知ります。ナナとレンが故郷で組んでいたバンド「ブラックストーンズ」のメンバー、ヤスとノブも上京し、新メンバーのシンも加わり、奈々のを取り巻く環境が変わっていきいます。

周囲の計らいもあってナナとレンは再会し、再び強くお互いを求め合うのですが、トラップネストのリーダータクミと奈々の結婚や、唯一無二の歌声と美貌を持つヴォーカルのレイラに対する複雑な感情などが、心に孤独を抱えるナナを不安定にさせていきます。

やがて話の舞台は芸能界が中心となっていきますが、それぞれの登場人物が抱える痛みや苦しみにはリアリティがあり、誰が読んでも、どこか共感できる部分があると思います。

なぜその漫画をオススメしたいですか? この漫画を読むと、いかに自分が自分だけのものさしで物事を見ているかがよく分かります。同じ物事でも見る人が変わればその様相はまったく異なるということ、そしてそのことを受容できなければ人との関係は円滑に保てないということを考えさせられました。自分が嫌だと思うことを相手が理解できるとは限らない。自分が良いと思うことを相手も同じように捉えるとは限らない。頭ではわかっていても、つい自分の感情が先に立ってしまいがちです。自分の価値観を基準にして、相手に期待を裏切られると「なぜ?」「どうして?」と、どんどんフラストレーションが溜まってしまい、すべてが悪循環になります。
この漫画は人間が持つ非常に複雑な性質を巧みに描き出しているため、これまでより一段深いところで物事を考えられるようになるのでオススメです。
登場人物は多いのですが、それぞれの心情がふとした時の表情や言動といったものを通して丁寧に描かれているので、まるで現実世界で人間観察しているかのように錯覚します。特定の登場人物に入れ込むというより、全体をフラットに見渡すことで得られるものがある漫画だと思います。

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